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 ローマ警察当局による「やくざ撲滅キャンペーン」は次第に激しさを増し、多くのキリスト組やくざが検挙、拷問、刑死の運命を辿った。だが、皇帝コンスタンティヌスが権力を握ることにより、キャンペーンも終結を迎え、遂にキリスト組は国家公認の任侠組織となった。やくざと国家の蜜月の時代が幕を開けたのだ。

 

 だが、血に飢えたやくざたちの戦いがこれで終わったわけではない。新たなる犠牲を求めるかのように、キリスト組やくざたちの闘争心は内部抗争へと向けられていく。事態を危惧したコンスタンティヌスは前代未聞の一大やくざ会議―ニカイア公会議―を開催するも、やくざたちの憤激が話し合いで収まるはずもなく、争いの火種は燻り続ける。

 

「エウッちゃんだけじゃけえのう。ほんまにわしの気持ちを分かってくれたんは、のう」

 

 老境に達したコンスタンティヌスの唯一の理解者であり、友であったのは、キリスト組やくざのエウセビオスだけであった。だが、哀しき皇帝は知らない。やくざ会議において汚辱を舐めたエウセビオスが今や復讐鬼と化していたことを。コンスタンティヌスもまた復讐の道具として彼の走狗に堕ちていることを――。

5章 ローマ帝国に忍び寄るやくざの影

(上:コンスタンティヌス)

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