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「おやっさん……おやっさん……なんでワシを見捨てたんじゃあ!」

 

 木製の磔柱に括りつけられた貧相な体躯のやくざの叫びが辺りに木霊した。一人のやくざの戦いは終わった。象に挑んだアリは事もなく踏み潰された。英雄ではなく敗北者としての死。現実は仁侠映画ではない。戦いに敗れたやくざの死は、常に惨めで虚しい。

 

 だが、この一人の野良犬やくざ――、イエスの死は物語の終わりではなかった。否、これから始まる仁義なき戦いの序幕にすぎなかったのだ。以降、二千年間に渡る血と惨劇の闘争史は、この瞬間から幕を開ける――。

 

 

 野良犬として生き、死んだ、一人のやくざ、イエスの物語。

1章 やくざイエス

2章 やくざイエスの死

上:イエス

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