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CHRIST

KAWAII

「うちの女子マネージャーが唯一神で困っています」

 

 外部からは賛否両論寄せられたし、現に内部にいる僕たちも決して楽な日々ではなかったけれど、それでも総合的に言うならば、僕たちは十分に幸運だったと思っている。なにせ、僕たち市立瀬霧(せむ)高校野球部には女子マネージャーがいたし、しかもそれを、我が校でも随一の美少女、いや、国内でもダントツのスーパー美少女が務めてくれていたのだから。僕たちにとって、彼女はまさに唯一神にも等しい存在だった。誰も彼女に逆らうことなんてできないのだ。

 

「今日から私がこの野球部の女子マネージャーをすることにしました。つきましては、私が付いている限りは、皆さんには是が非でも甲子園で優勝してもらいます!」

 

 今年の七月、部室を唐突に訪れた一年生の彼女は、さらに続けてこんな大それたことをしれっと言い放った。もちろん、みんなは唖然としてしまう。

 

「いやあ……。それは無理だよ、八葉重(やはえ)ちゃん」

 

 と、当時主将だった三年生の先輩が、彼女――八葉重エリちゃんに向かってそう言った。

 

「俺たちも練習はそれなりに頑張ってるつもりだけど、せいぜい一回戦を勝てるかどうかの弱小校だし、今から頑張るといっても、予選開始まであともう一ヶ月もないんだよ」

 

 今となっては名前も思い出せないけれど、この先輩の発言はあまりにも常識的で、普通に考えてまったくその通りだったと思う。けれど、それを聞いた八葉重ちゃんはにっこりと笑い返した。学園一の美少女の微笑を受けて、僕たちの胸がキュンと弾んだような感覚に襲われた。(「うちの女子マネージャーが唯一神で困ってます」冒頭部より)

 

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 万年予選敗退の弱小野球部に、学園いちの美少女、八葉重エリちゃんが現れた! 女子マネージャーとして、彼女は野球部を甲子園優勝に導くという。困惑する野球部員たち。八葉重ちゃんの秘密の作戦とは!? 新マネージャーの家杉(いえすぎ)よしえさんも加え、瀬夢高野球部は衿戸(えりこ)高校、藍(あい)高校などの強豪校に挑んでいく。そして、宿敵、伊須村(いすむら)高校との決着の行方は――!? 愛と青春の唯一神ベースボール活劇、「うちの女子マネージャーが唯一神で困っています」を大増量の二篇収録!!

 

 

 

 

 

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